日本妊活協会の北川です。 今日は体外受精についてお伝えしたいと思います。
今朝(12月22日付)の朝刊に日本の年間出生人数が初めて100万人を切ったとの記事がでていました。
現在日本の人口出生率は低下していて、このままでは生産人口を保つ事ができない、そのような事もいわれています。
そんな中で、病院などで生殖医療を利用される方々は年々増加の一途を辿っています。
体外受精とは
体外受精とは人為的にホルモンを身体に入れて、卵子を育て、それを採取して(採卵)、人工的に精子と受精させて、ある程度、受精卵として育てた状態で身体へと戻す(移植)生殖医療です。
2012年に日本産婦人科学会が発表している資料によると、体外受精を移植まで実施し妊娠されたのは20%との報告があります。 体外受精は保険が効きませんので、一度の実施において50万円前後の費用がかかってきます。
お話をお聞きしていると、過去に、体外受精を何回も行っているが結果が伴わず、自分の身体がどうなっているのか?という不安や苦しみを言葉として皆さん共通してお伝えになられます。
高額な金額を投じても平均5回に1回の成功確率では、ご不安になられるのは当然だと思います。 当施設に来られる方々も平均3.0回以上ご経験されて来られています。
そして、ご主人から、最終的な「決断」を一任されている方々が多く、ご自身が出した「決断」が本当によかったのかどうか、体外受精を重ねる度に気持ちを損なった過去がお聞きする中で更に伝わってきます。
そのような不確定な決断を迫られる生殖医療である体外受精を、今後実施される場合に抑えておいた方がよい幾つかのポイントを、お伝えしたいと思います。
この事を知っておかれる事で気持ちの整理や治療方法の決断の一助になると思います。
グレードについて
体外受精の成功を事前に図る目安として、採卵できた卵が受精し、どれ程育ったかが重要な診断基準としてあります。
この受精してある程度育った卵子を「胚盤胞」といいます。 この「胚盤胞」の成長分類したのが「ガードナーの分類」です。
精子が卵子に受精すると、卵の中は「分裂」を繰り返しながら「胎児になる」部分や「胎盤になる」部分に分かれていきます。
それを「グレード」という基準で分類したものです。 分裂していく過程を1〜5までに分類して 、分裂がある程度すすんだグレード3以上から
1)胎児になる部分(内細胞塊) 2)胎盤になる部分(栄養芽細胞) の部分を、「大きさ」や「均一さ」のランク付けして、 A~Bまでの分類に更に分けたものになります。 例えば、分裂を繰り返して成長して「胚盤胞」という形になり 孵化するまで成長して、内細胞塊や栄養芽細胞の大きさがあり、形もきれいだったら 5AA そのように表記されます。
分裂していく」という事は細胞が成長している事ですので、「グレード」が着床成否の指標として捉えられている経緯があります。
卵を「胚盤胞」までに育てる為には、その方の 年齢 AMH(卵巣年齢) AFC(胞状卵胞数) FSH値(卵巣を刺激するホルモン値) によって刺激方法を変える必要がありますが、これは各医療施設によって異なります。
また、マウスに高脂肪食を食べさせた群とそうでない群との比較した場合に、高脂肪食を食べさせた群の胚盤胞に至る「スピードの遅さ」や「分裂の少なさ」も指摘されています。【Hum Reprod 2015; 30: 2084】
体重管理は質を保つ上でポイントになるようです。 現在、体外受精に臨まれる皆さんとこの「グレード」と「数」をひとつの目標にしてサポートを進めています。
ただ、必ずしもグレードがよいからといって結果に結びつかない事を、過去において経験したという事をよくお聞きします。
染色体の問題について
ガードナー分類においては、形態(見た目)で胚盤胞(受精した卵)の成長具合を判断して評価します。 しかし、2014年に計213名の方から得た956個の胚盤胞の着床の有無、そして染色体の検査を行った場合において、「形態」よりも、卵子の中にある細胞の設計図となる「染色体」の影響が大きかったとの報告があります。【Hum Reprod 2014; 29: 1173】
この報告は、先ほどのグレードが良くても成功しない事へのひとつの回答になると思います。また、グレードが悪くても着床する可能性が十分にある事にも繋がっていく事が考えられます。
この染色体の状態に関して、民間で行える遺伝子の検査があります。 正常な「染色体」をもつ胚盤胞に関しては、胚盤胞の形態、分割のスピード関係なく等しい成績につながった事もいわれていますので、遺伝子検査の必要性は高いと思いますが、実施している医療機関はごく限られています。
卵を受け入れる子宮内膜について
子宮内膜症という内膜に腫れた突起物がある事が着床を妨げる因子として挙げられますが 子宮内膜症の診断を受けた5万人近くの方の、その後に不妊症(1年以上妊娠しない)の診断の有無について調査した結果、子宮内膜症の診断を受けられていない方と2倍の違いがあった報告がなされています。
ただ、35歳以上の方に関してはその差はみられなかった報告も同時になされています。
当施設の妊娠された平均年齢は35.06歳ですが、子宮内膜症があられても妊娠されている方は沢山おられる事からも内膜症の有無は重要ではないのかもしれません。
また、別の報告では流産歴のある方と出産歴のある方の子宮内膜を採取して比較した場合に、流産歴がある方の内膜においては、正常ではない胚盤胞を取り込む傾向があった事も報告されています。【July 25, 2012DOI: 10.1371/journal.pone.0041424】
この事からも「良質な胚盤胞」がやはり重要であるといえます。
様々な要因があって、どうすればよいのかと思われるかもしれません。
過去の経験から幾つかの具体的な取り組みで、今まで卵が取れなかった方が採卵できて、初めて陽性反応を頂かれて出産されたり、着床出来なかった方が妊娠に繋がったりする事を数多くみてきています。
体外受精で苦しまれている現状を進める具体的な方法は在ります。 それを簡単にご紹介していきたいと思います。
卵の強さを促す
1)ひとつは「栄養」です。
成熟した卵になる為には、卵子が入っている「卵胞」という袋の中に、「脂肪」が豊富に入っている必要があるといわれています。
この事からも、良質な「油」を摂る必要があると思います。アマニ油やオリーブオイル、またはバターなど、ひとつの油だけでなく、様々な油をバランスよく摂る事が大切です。
また、細胞が分裂していくにはミネラルが必要です。マグネシウムやカルシウムなどを摂るように心がけて頂ければと思います。
2)栄養を卵巣や子宮に届ける為の「運動」
卵巣に伸びる卵巣動脈は腰椎の1〜2番目の辺りの腹大動脈から分岐しています。 そして、左右にその経路を伸ばしていますので、特に股関節の動きが大切です。
また、内臓は全体血流量の20%を占めています。同時に腹部内の血流量を上げるようなコア・エクササイズは有効です。
ヨガ、ピラティスなどのボディワークなどに取り組まれてもよいかと思います。
3)適切な時期の選定
例えば、体外受精を実施する際には子宮血流量が多い方がよい時期と、そうではない時期があります。 胚盤胞の移植前は血流量を上げる必要性があります。潤沢な内膜をつくるためです。
そして、移植後は反対に血流量を下げておかなければいけません、これは胎盤を形成する為に血液が固まらないといけない事から緩徐な血流量が必要な為です。 そして、体外受精に臨まれる前からできる事もあります。
精液の子宮内の暴路が子宮内膜の免疫を向上させて、着床を促進する事もいわれています。【Biol Reprod 2009;80: 1036】
通常、体外受精に臨まれる事でセックスレスになられる事をよくお聞きします。 ただ、子宮内にて、受精卵を受け入れやすくする「免疫」を上げる為にも、採卵に差し支えのない範囲でタイミングをとっていくのは有効と言えます。
これ以外にも細かい日々の気をつけて頂きたい事や、取り組んで頂きたい事はあります。
また、機会があればお伝えできればと思います。そして、妊活協会認定院の方々にも詳しくお尋ね頂ければと思います。
きたがわ整体 北川 慎也